
心やさしい救急車のキュルルが、ケンカして泣いてしまったお友達を手当てし、仲直りの笑顔を咲かせるお話。

キュルルと なかなおりの おはなばたけ

ぽかぽかとあたたかい春の朝。にぎやかな街の通りを、ぴかぴかの小さな救急車、キュルルが走っています。9歳くらいの元気な男の子の心を持つキュルルは、道ばたに咲くお花をながめるのが大好きなのです。「きょうも 町の みんなが 元気で ありますように!」キュルルは 楽しそうに お花畑へと 向かいました。

町の真ん中にある、みんなの憩いの広場に着きました。そこには、赤や黄色、紫の色とりどりのチューリップやパンジーが、風にゆれて咲き誇っています。甘い香りに包まれて、キュルルがにっこり微笑んだそのときです。「だめだよ、ぼくが つかうんだ!」「ちがうもん、わたしの番だもん!」広場の奥から、怒った声が聞こえてきました。

キュルルがそっとのぞきこむと、ピンクの服を着たうさぎさんと、青いズボンをはいたくまさんが、黄色いじょうろをひっぱり合っていました。「お花に お水を あげるのは わたし!」「ぼくだよ!」ふたりとも顔を真っ赤にしてゆずりません。お花が大好きなキュルルは、ケンカが大の苦手。「やめて、ふたりとも!」と叫びました。

そのときです。ふたりが勢いよくじょうろを引っ張った拍子に手がすべり、すてーん!としりもちをついてしまいました。「イタタタ……!」うさぎさんもくまさんも、ひざをすりむいてしまって、大きな涙がぽろぽろとこぼれ落ちます。じょうろは遠くへ転がり、お花畑にはふたりのシクシクと泣く声だけが響いていました。

「だいじょうぶかい?」キュルルはあわてて駆け寄り、大切に積んでいた救急箱を開けました。かわいい星の模様がついた絆創膏を、ふたりのすりむいたひざにやさしくペタリと貼ってあげます。「いたいのいたいの、とんでいけー!」キュルルが魔法のおまじないを唱えると、ふたりのひざの痛みがすうっと消えていきました。

泣き止んだふたりの頭をなでながら、キュルルはにっこり笑いかけました。「ケンカをすると、胸のなかもチクチク痛むよね。ねえ、この特別な花の種を、ふたりで一緒に植えてみないかい?」キュルルが差し出した手のひらには、まあるくてあたたかい、仲直りのひまわりの種がふたつ、ちょこんとのっていました。

うさぎさんとくまさんは顔を見合わせました。「……じょうろを ひとりじめして ごめんね」「ぼくこそ、いじわるして ごめんね」。ふたりは照れくさそうに手をつなぐと、小さなスコップでやさしく土を掘り、種を仲良く植えました。ふたりの手と手がふれあって、黄色いじょうろで一緒にたっぷりお水をあげました。

すると、土のなかから小さな緑の芽がピョコンと顔を出し、お花畑全体がキラキラとあたたかい光につつまれました。「わあ、咲いた!」「ありがとう、キュルル!」うさぎさんもくまさんも、とびきりの笑顔です。キュルルの頭の上の回転灯も嬉しそうにピカピカ輝き、町にはやさしい笑顔があふれていました。
この物語に届いた気持ち