
放課後の学校で、いなくなったハムスターを探すユウタとミオ。小さな命を見つけるための、二人のやさしい思いやりを描いた物語。

夕焼けのマロと、ぼくらの約束

がらんとした放課後の校庭。みんなが帰っていく中、花咲ミオちゃんは一人、飼育小屋の前でしょんぼりしていました。そこに、サッカーボールを抱えた青空ユウタくんがやってきます。「ミオちゃん、どうしたの?元気ないね」。ユウタくんが心配そうに声をかけると、ミオちゃんは小さな声でつぶやきました。「あのね……マロが、いなくなっちゃったの」。マロは、みんなで育てている、真っ白でふわふわのハムスターです。

ミオちゃんの大きな瞳に、みるみる涙が浮かんできました。「朝、お掃除したとき、うっかりカギを閉め忘れちゃったのかもしれない……」。ぽろぽろと涙をこぼすミオちゃんを見て、ユウタくんは胸がきゅっとなりました。そして、持っていたボールを地面に置くと、ミオちゃんの肩をぽんと叩きました。「大丈夫だよ!僕も一緒に探すから!二人ならきっと見つかるよ!」。ユウタくんの力強い声に、ミオちゃんは顔を上げました。

二人の大捜索が始まりました。まずは、飼育小屋のまわりから。「マロー!どこだー!」とユウタくんが呼べば、「マロちゃん、出てきてー!」とミオちゃんも続きます。植え込みの葉っぱをそっとかき分けたり、体育倉庫の裏を覗き込んだり。でも、マロの姿はどこにも見当たりません。だんだん太陽が傾いてきて、ミオちゃんの顔に、また不安そうな影が落ち始めました。「もう、おうちに帰っちゃったのかな……」。

ユウタくんも、さすがに少し疲れてきました。ふと、一息ついてあたりを見回した、その時です。校舎のわきにある花壇の影で、何かがもぞ、と動いたのが見えました。それは、白い絵の具をぽつんと落としたような、本当に小さな小さな動きでした。「ん?」。ユウタくんは目をこらします。見間違いなんかじゃありません。確かに何かが、そこにいます。「ミオちゃん、あそこ!」。ユウタくんが指さした先に、ミオちゃんも息をのみました。

二人は、足音をしのばせて、そーっと花壇に近づいていきました。すると、そこにいたのは……やっぱりマロでした!でも、マロは花壇のレンガの段差の上で、体を丸めてぷるぷると震えています。どうやら、下に降りるのが怖くて動けなくなってしまったようです。「マロ……!」。ミオちゃんが小さな声で呼びかけると、マロはぴくっと耳を動かしました。でも、やっぱり怖くてその場から一歩も動けません。

その時、ユウタくんがゆっくりと手を差し出しました。「大丈夫だよ、マロ。怖くないからね」。ユウタくんは、まるでマロの心に語りかけるように、優しくささやきました。すると、不思議です。あれほど震えていたマロが、おそるおそる顔を上げ、くんくんと匂いをかぐと、トコトコとユウタくんの手のひらに乗ってきたのです。まるで、ユウタくんの優しさが伝わったかのようでした。

「わあっ……!」。ミオちゃんは、思わず声を上げました。そして、ユウタくんの手のひらのマロを、自分の両手でそっと包み込みます。「よかった……本当によかった……!」。ミオちゃんの瞳から、今度は嬉し涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。さっきまでの悲しい涙とは違う、あたたかくて、キラキラした涙です。ユウタくんは、そんなミオちゃんを見て、なんだか自分のことのように嬉しくなり、にこっと笑いました。

すっかりオレンジ色に染まった空の下、二人は並んで帰り道を歩きます。ミオちゃんの手の中では、マロがすやすやと気持ちよさそうに眠っています。「ユウタくん、本当にありがとう。ユウタくんがいなかったら、マロを見つけられなかったよ」。ミオちゃんが心から言うと、ユウタくんは少し照れくさそうに頭をかきました。「ううん。ミオちゃんがマロを大好きだから、見つかったんだよ」。二人の影が、夕焼けに長く長く伸びていました。
この物語に届いた気持ち