
小さな思いやりがつながって、クラスみんながあったかくなる一日のお話。

やさしさリレーの教室

春の朝。新しい教室の空気は、すこしだけドキドキのにおい。まひろは席にすわり、ランドセルをそっと開けました。ポケットから四つ葉のしおりがひらり。あっ、と手をのばすと、隣のゆいが先にキャッチ。「落ちるところだったね」とにっこり。まひろの心も、ふわっと軽くなります。小さなやさしさが、教室にひとつ灯りました。

国語の時間。教科書の文字が、今日はいつもより小さく見えます。まひろの声はちょっぴり弱く、「どきどき」。すると前の席のそうたが、指でふりがなをそっと示し、「いっしょに読もう」と小声。まひろは深呼吸、ふわっと声が乗りました。先生が「いいテンポ」とほほえみ、教室にぱちぱちと温かい拍手。

体育の時間。ボールがころころ、棚のすきまへすっぽり。「あれれー」みんなでのぞきこみます。図工が得意なみおが、新聞紙をくるくると棒にして、「ゆっくりね」。息を合わせて、ずずっ。ついにボールがぴょん!わあっと笑顔がはじけました。まひろは手を大きく振って「ありがとう!」汗がきらり、風までごきげんです。

廊下で靴がころん、ころん。転校したばかりのれんが、上ばきを落として困り顔。まひろはすぐに階段をたたたっとおりて、靴をひょい。「だいじょうぶ?」と手渡すと、れんの顔にぱっと笑顔。「ありがとう」。その声が胸にあたたかく残ります。さっきもらったやさしさを、今度はぼくが。

給食の時間。れんの牛乳のふたが、くるくる、でも開かない。「よかったら…」まひろが声をかけると、ゆいが布巾を持ってきて、そうたがコップをおさえます。みおが合図、「せーの」。ぷしゅっ、小さな音に「やったね!」。湯気がもくもく、パンの香りがふわり。れんが「みんな、やさしいね」と、ほっと笑いました。

昼休み。花だんのチューリップが、ゆらゆら。風がつよくて心配です。みおが「風よけ作ろう」と言い、みんなでダンボールを並べ、石でそっとおさえました。「ここ、持ってて」「うん」息がぴったり。風がふいても、花はゆっくり揺れるだけ。れんの横顔がやさしくて、まひろの胸もふわっと温かくなります。

掃除の時間。冷たい水でぞうきんをしぼると、指がきゅう。ぽとりと落としたら、そうたが乾いたぞうきんを渡し、ゆいがバケツをおさえ、みおは床のすみをきゅっきゅっ。みんなで「せーの」。黒板がピカッと光って、思わず拍手。れんが「明日はぼく、チョークならべるね」と笑います。輪が、またひとつ。

帰りの会。先生が「今日は心があたたかくなる場面がたくさんありました」と言って、黒板のすみに小さなハートをくるり。まひろは手をあげます。「もらったやさしさ、つぎの人にわたせたよ」。みんながうなずき、れんもにっこり。窓の外、さくらがひらり。やさしさのリレーは、明日もきっと続きます。
この物語に届いた気持ち